strawberry mandae
タイトル
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 普通の女が相手だったら、殺して忘れさせるなんて選択肢は常になかった。しかし、普通の女が相手だったら、そもそも忘れさせたいような事態が発生しなかったかもしれない。時々はそう考えるが、大まかに言えば今の生活に満足している。

「あなた……おかえりなさい♡」
 デルウハは、のいつもと違う甘い声に、なんだか嫌な予感がした。とろんとした目つき、汗ばんだ首筋、リビングまで引っ張る手も、心なしか熱い気がする。妙な予感は、手を洗って食卓に着く頃、確信に変わる。
(いつものか……)
 若干呆れながら、デルウハは黙々と食を進める。食卓に並んでいたのは、『精が付く』と言われる食材ばかりで、火照った様子の妻と合わせると、つまりそういうことだった。
「したいなら、風呂に入ってこい」
「お風呂はもういただきました」
 したい、という部分は否定せず、はデルウハの口元を見つめる。早く食べ終わらないかしら、そんな目で。
「美味しい?」
「……ああ、美味いよ」
「嬉しい♡」
 はまるで、自分自身を褒められたかのように頬を染め、頬杖をついて微笑む。
 デルウハは、料理の感想については誤魔化したりしない。料理も上手い、洗濯も家事も完璧、出過ぎたこともしないし、見た目にも美しい。一人でいるよりも快適な衣食住が保証されると確信したから、この女と一緒になったのだ。たまに抱いてやり、家の事の出来を褒めてやるだけでいい。生来の性欲に差はあれど、デルウハは、この家にそれだけの価値を感じていた。
 それに、デルウハも一応人間ではある。の程よくくびれた身体や、どこで覚えたのかわからない誘惑に、全く何も感じないかと言えば、そうではなかった。
 だからといって、毎日のように求められても困るが……。
 食事を終える頃には、はすっかりその気になっていて、食器の後片付けもほどほどに二人はすぐに寝室へ向かった。
 ネグリジェを乱雑に脱いだは、妖艶な下着を見せつけるように腹を見せて寝転んだ。
「あなた……♡」
 は熱っぽい声で呼びかけ、デルウハに手を伸ばす。デルウハは大人しくその手を握り、覆い被さるように四つん這いになった。
 今日は、ひらひらした黒いブラジャー。繊細なレースが、乳房の大きさを強調するようにぴったりと張り付いている。ショーツも、陰毛が透けて見えるほど薄い素材だ。先程までこれらを隠していた、あの白いネグリジェには似合わぬ気合の入りようだ。余程期待していたのだろう。デルウハは、冷静な頭ではの性欲の強さに呆れながらも、下半身に熱が集まるのを感じていた。美しい女の四肢に抗えぬ、雄の本能に苦笑する。
 は、本当にデルウハのことが大好きらしい。身体の変化にも直ぐに気が付いて、服の上から愛おしそうに撫で始める。
「よかった、硬くなってきた……♡」
「……何度も言うが、俺にも性欲くらいある」
 嘘ばっかり、と言わんばかりに尖らせた唇に、デルウハはしゃぶりついた。がキスを好むことぐらいは、わかっている。
 自分より柔らかく、小さく、肉厚な唇が、遠慮がちに吸い付いてくる。が控えめに伸ばしてきた舌を、大胆になれと教えるように絡めとった。
 最近気に入っているという、果物の香りが付いた口紅。どう、と嗅がされたあの香りがした。風呂に入ったあと、わざわざ塗り直したのだろうか。下着もそうだ。自分のために、わざわざ準備したのだろうか──デルウハは、一般的な愛情という感情がわからなかったが、にひどく愛されているということだけは、よくわかった。わからされていた。
「ねぇ、触らせて……」
 いじらしいお願いに、デルウハは頷く。
 今度は、デルウハが下になった。は、デルウハの投げ出された脚の間に入り込むようにして屈む。ズボンのチャックだけ下ろして、下着越しにそれにキスをすると、一日の汗を堪能するようにスンスンと鼻を鳴らした。
「いいから、早く脱がせろ……」
「はい♡」
 下着をずらすと、ブルンと勢いよく……とはいかないが、それなりに硬さと熱を持ったものが現れた。それでも、は少し残念そうだった。は、少し"工夫"すれば、最初から完全なそれと対面できると思っているみたいだが、デルウハの年齢からすると、こんなものだ。はどうも自己評価が低いところがあって、自分のせいかと気に病んでいるであろうことは容易に想像がついた。
「……身体を見せてくれ」
「あぁ、はいっ♡」
 は色気も何もない笑顔で、するすると下着を剥ぎ身一つになった。脱ぎ方は今ひとつだったが、乳房と陰毛に、デルウハのものは自然と反応する。が、上目遣いで様子を伺う。
「その気になってきた……?」
「ッ、お前は…………もうなってる」
 何もわかっていないようなの表情に、デルウハは苛立ちすら覚える。
 は、半勃ちのそれにとろみのある唾液を垂らし、指で馴染ませるように擦り付けると、豊かな胸の間にはさみ込んだ。の谷間には汗が伝っていて、熱を持った身体は少し赤らんでいるような気がした。乳房を下から持ち上げるようにして、はぎこちない上下運動をする。膣の中に比べればさして気持ちよくはないが、視覚的に興奮させる効果が強く、デルウハのものは硬度を増してきた。視覚的に興奮しているのはも同じ様で、自分の谷間から顔を出すそれと、つぼみのように自己主張している胸の先を交互に見ては、だらしなく口を半開きにしている。その様を見ていると、苛立ちと共に情欲が生じて、デルウハは、突然の両の乳首をつまんで引っ張った。
「っ、あっっ♡」
 は、びくんと跳ねるとお尻を突き出した。それでも、胸が自分に向けて差し出されたままなので、デルウハは、さらに強く乳首をつねる。は、あ、あ、と意味のない言葉を発して、デルウハにしなだれかかった。
「おっぱい、すき……♡」
「知ってる」
 そろそろいいだろう。力なくキスをせがむを仰向けに転がして、デルウハはショーツのリボンを解いた。そのままするりと抜き取る。この形は、脱がせるのが楽でいい。股に当たる布の部分はぺたっとしていて、濃い雌の匂いがした。
 それは、秘部そのものも同様だった。体液でぐちゃぐちゃになったそこは、ひくひくと収縮し、挿入をせがんでいるようだった。丘から肛門まで、大事なところを守るように生え揃った陰毛は、しっとりと濡れていていやらしい。陰毛と同じく密に生えたのまつ毛は伏せられていたが、期待を隠せない視線はチラチラとデルウハのものに注がれていた。
 デルウハはやや乱暴にの脚を持ち上げる。少し雑にする方が興奮する女だと知っているのだ。
「はやく……♡」
 デルウハは哀願するを無視して、陰核を指で優しく弾いた。刺激に対してムクムクと露出しかけている芽を、デルウハの太くざらりとした親指が、押しつぶすように刺激する。の身体の中で一番敏感な部分だ。は「あ、あ♡」と情けない声を出しながら、背中を反らせて反応する。
「くり、もういいからぁっ♡早くぅ〜っ♡」
「まだダメだ。慣らしてもいないし、何回かイってからだな」
 そう言って、膣の中に指を入れると、あっさり飲み込まれてしまう。二本三本と増やして、ばらばらに動かす。はシーツを握りしめながら声を漏らしていたが、違和感があった。普段はもっと慣らすのに時間がかかっている気がするが──。
「さっきも、デルウハのこと考えて一人でしちゃったからぁ、♡もう入れても大丈夫だよ……?♡」
「ああ……」
 帰宅の時点で、妙に色めいたムードであるのを見てとって、なんとなく察してはいた。一度済ませたあとでもこんなに求めてくるのか……とデルウハは呆れて笑う。
「だから、こんなになってるんだよ……♡デルウハのおちんちん欲しくて、変になっちゃったの……♡」
 の性器からは、絶えず愛液が流れ出ている。太腿まで濡らして、シーツを汚すほど。
「ねぇ、お願いします……っ♡」
 情けない姿だ、とデルウハは思う。全裸で、股を開いて、体の中心を他人に晒して。動物と同じだ。セックスの最中は、どんなヤツも限りなくバカになってしまう。それでも、と思うには、デルウハは合理的過ぎたが、女の機嫌をとるために、たまにはバカになることが必要だった。
「……、愛してる」
「ああッ♡」
 言い終えぬうちに、一気に貫く。の膣がギュッと締まる。は、抱かれながら愛の言葉を囁かれるのが好きなのだ。デルウハは、自分の腕の下で悶える女を見下ろしながら言った。
「今日は何回だ……?」
「いっぱいしたい♡」
「……いっぱいか。仕方ない……」
「うれしい……♡」
 はとろけた‪笑顔で脚を絡めてくる。表情こそ可愛らしいが、結構な力だ。普段はハントレスらしいところは見せないが、こういうふとした所作で思い出すことも多い。しかしながらこの程度の力は、完全な女狩人たちと比べると子供の癇癪程度だ。
「ねぇ、お願い、もっとひどくして……♡」
 の中は、デルウハを容赦なくぎゅうぎゅうと締め付ける。は料理が上手いだけではなく、床の才能もあった。なんだか癪ではあるが、そちらの面でも良き嫁だ。
 対面座位が好きなのために、デルウハが背中を起こしてやると、そのまま、自ら腰を動かし始める。
「デルウハ……好き、すきっ……♡」
 は夢中になってデルウハの首にしがみつく。デルウハはその頭を撫でながら口付けをする。舌を絡ませ合いながら、お互いの体温を感じ合う。
「デルウハ……♡」
 柔らかい乳房が、身体の動きに合わせて揺れる。乳首が擦れる度に、は甘い吐息を漏らし、膣を締め上げ、射精を促してくる。その瞬間、デルウハは、この女を美味しそうだと衝動的に感じた。その衝動のままに、多分少し痛いくらい、強く、乳房に噛み付く。の肩が跳ねた。
「っ、あ……♡」
「やりすぎた」
「や、ううん、……いい、いいの……♡」
 目に涙を滲ませながらも、の言葉に嘘はないとわかった。むしろ、恍惚とした様子ですらあって、デルウハは、と出会ったときのことを思い出した。
 研究所にいた頃……は、失敗作の女狩人で、再生能力と、その美しい身体以外取り柄のない、お人形だった。死なないから脚の肉を食べてみて、と迫られ、断った。デルウハに食人の趣味は当然なかった。
 デルウハの生理的欲求のうち、多くは食欲が占めている。今、性的欲求を食欲に近いものと誤認して、柔い女の肌に歯形をつけるまで至ってしまった。
「わたしのこと、食べてもいいよ」
 の言葉で、デルウハは現在に引き戻される。
「美味しそうでしょう?わたし……」
 うっとりと呟くが、知らない生き物のように見えた。上気した生白い肌の下に、イペリットのような未知の生物がわらわらと這っている──そんなイメージが頭をもたげる。こういう関係になっても未だ、食べられたいという名の希死念慮を心の底に秘めていたことに寒気がする。少しだけ軽く、噛みついたことがきっかけで──
「……お前は美味そうだよ、」
「あなた……♡」
 囁きながら、デルウハはを押し倒して、ゆるく腰を動かす。は明らかに感じた顔をして、はっ、はっ、と短く息を漏らしながら、快楽を追うように身体を合わせている。デルウハはの顔に両手を添えて、親指で耳の穴を塞ぐと、そのまま、唇を軽く喰むようなキスを繰り返した。少しずつ強く、噛み付くように、血が滲むように。
「……」
「あ、あっ……♡」
 は、何度目かの絶頂が近いようだった。名前を呼ばれるだけで感じるらしく、呼ぶたびに一層強く抱きついてくる。陰毛が擦れ合うくらい深いところで触れ合いながら、デルウハは、頬を撫でていた手を、少しずつ首に降ろしていく。自分自身も、ピークが近いのを感じている。
「あっ、あっ、だめッ……♡」
 やりすぎだと思いながら、の頬に噛み付いた。
 の中がギュッと一番に締まって、デルウハも、首にかけた手にグッと力を込めた。そして、とびっきり優しい、かつて女狩人たちに使っていた様な声色で、
「あとで食べてやる」
 と、囁いた。
「ッ……ッっ……!」
 は何も言えず、ただ膣の中がビクビクと収縮して、弛緩した。それに連動して、脚がピンと突っ張ったあと、脱力する。確認しなくとも、は死んだとデルウハにはわかった。これが一度目ではないのだ。どのくらい絞めれば死ぬか、加減はわかっていた。
 噛み跡がまばらについた裸体を見下ろして、ため息をつく。
 結局、自分は寸止め状態になってしまった。処理だと思って手でしてみるが、もうそんな気分ではない。それは全く構わないが、冷たくなっていくを見ていると、気が滅入った。
 女狩人、もとい、変わった女と暮らしていくというのは、楽じゃない……。
 残り物でも食べるかと、デルウハはキッチンへ足を向けた。